■ 雑誌や招待論文等の中から一部を抜粋して掲載します.
○第8回:シェアコミュニティ志向の若者誕生とNew住宅双六
●第7回:地域社会とつながる動き―日本の先進的な協同居住・シェア居住
○第6回:北米の協同居住コウハウジング(Cohousing)
●第5回:各国のコーポラティブハウスの歴史と近況
○第4回:経年変化後の日本のコープ住宅の行方
●第3回:居住者参加型住まいづくり―日本のコーポラティブハウス
○第2回:日本特有の単身者住まい「シェアハウス」
●第1回:高齢者の孤独化と若者の住宅問題から生まれた、欧州の「世代間ホームシェア」
(建築士CPD講座の連載①~⑧「世界の助け合い」から学ぼうより抜粋, 建築士, No.766~773, 2016.7~2017.2)
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●第7回:地域社会とつながる動き―日本の先進的な協同居住・シェア居住
世界の助け合いハウジングは、住まいや暮らしを通じて価値観を共有し、共に住み、共に助け合い、共に生きる、3共のハウジングシステムである.さらに、重度な要介護状態となっても自分らしい暮らしを最後までコミュニティー内で続けることができるように、地域
社会と連携した住まい・暮らしづくりを進めている.
一方で、日本の協同居住・シェア居住の多くは、居住者(特に高齢者)が自立できることを前提にコミュニティーが形成されており、仲間たちと支えあいながら一生涯住める<終のすみか>として想定しない場合が多い.
2015年4月に介護保険制度の改正が行われ、要支援者向けの介護保険生活支援サービスが徐々に見直され、先々不安な老後生活が予想される.高齢者を含む多世代・多家族が共に集まって住むカタチとして注目されている協同居住・シェア居住は、比較的賃貸タイプが多く、居住者間の「内側共助」だけでは限界があり、これからは地域社会と連携する「外側共助」も加わった「総合共助」のシステムが必要であろう.
【 日本の先進的な協同居住・シェア居住 】
■女性熟年者向けの終の棲家
①高齢単身女性たちが同じ屋根の下でお互いに助け合いながら共助する小さなコミュニティー
②有償ではあるが、入居引越しから生活支援・介護支援・通院・入退院支援・看取り・葬儀手配・遺品整理・
法事手配まで一貫したサービス
③介護保険でヘルパーやデイサービスなどを利用
④居住期間は終身になっているが、入退院や途中退去も可能
■地域に開く多世代向けの協同居住
①新しい高齢者居住・多世代・シェア・地域開放などのコンセプトを持ち、
豊かなコミュニティースペースのある賃貸住宅
②入居者や地域の方が会員になって、キッチン付きパブリックラウンジや集会室などで好きなことをしたり、
講座に参加したり、開講したり、アトリエなどとして利用
■シングルマザー向けの社員寮型
①シングルマザーに対して仕事と住居を同時に提供する新たな試み
②介護業界での人材確保の不足解消やシングルマザーの雇用促進、
シングルマザーの家庭での子育てと仕事の両立できる環境を整えていくために始まった事業
■市営住宅の新たな試み
①市営住宅における入居者の孤立死防止や高齢単身者の入居機会拡大を目的
②一般的な市営住宅の募集と違い、友達や知り合いと一緒にグループで申し込むことができる
■地域住民と若者と高齢大家が共存
自宅の一部を地域に住み開き、同敷地内のアパートの一部を若者のシェアハウスやシェアオフィスとして提供
日本においても、前回まで紹介したような各国の助け合いハウジングシステムの試みが現れ始めている.しかし、新たな住まいに対する社会的な認知度が低く、入居者募集に大変苦労している事例が多い.また、入居前のマッチング組織の経験不足や入居後のトラブルに対するアフターケアなどの欠如などによって、居住者の入れ替わりが激しく、長期居住へとつながらない場合が多い.
さらに、入居希望者の住まいに対する理解不足は、入居後の居住者間のコミュニティーにも悪影響を与えており、空室になっても次のルームメイトの入居の妨害につながる可能性が高い.シェアハウスなどに対する規制は以前と比べて緩和されてきたが、個人事業者からはいまだに厳しいとの話が聞かれる.
(2017.1 丁 志映)